From Chuhei

 

 

写真の中央は「上海万博で最も有名な日本人」として地元で万博ママとして親しまれた

山田外美代(とみよ)さんです。

 

 

この山田さんも、40年前の大阪万博の電気通信館(下記写真)で携帯電話を手に持って

通信技術の未来の発展にワクワクしたそうです。当時の携帯大きなものでした。

 

 

 

大阪万博のスカンジナ館のホステスです。

 

 

上海万博はイタリアのミラノに引き継がれます。

 

 

 

 

 

拝啓 万博おばちゃん

 

 

上海万博184日を皆勤し、38日で全387施設を回られた山田外美代さまへ

 

上海万博の最終日10月31日、私はテレビのニユースで、万博の成功を宣言する温家宝首相の話を聞いていました。

そのスピーチのなかで中国首相自ら貴女のことを話したのです。

 

「日本人山田さん、人呼んで万博おばちゃんは自ら183枚の入場券を買って、開幕以来毎日姿を現しました」尖閣諸

島をめぐる中国漁船衝突事件などで、正式の日中首相会談さえ開けにくい状況の時に、日本人女性を深い友好の象徴と

して取り上げさせたのは、貴女の熱意のたまものです。

 

私は《これは快挙だ! すごい日本人がいた!》と思わず口に出していました。

 

10月1日の「中国デー」関連の行事ではすでに有名になって招待が決まっていた貴女に、中国側から直前、取りや

めの通告があったのですね。しかし、貴女は毅然として

 

「万博は国籍に関係なく、世界中の人が交流できる場所でなくてはならない」

 

として交渉され、出席されました。私は貴女の通された強い意志に感服いたしました。

 

愛知県瀬戸市にお住いの貴女は2005年の愛知万博の時も185日の皆勤を記録されました。そして、

 

「環境への配慮を掲げた愛知万博の理念が上海万博でどう継承されるのか確かめたい」

 

として、上海行きを決意されたのでしたね。そのために1千万円をため、会場の近くにマンションを借り、夫や長男と

ともに上海へ移り住まわれたのですね。

 

実は私も1970年の大阪万博では、万博おじちゃんでした。77カ国、機構、政庁、州、都市、企業を含めて116

の展示館を全部回るのに懸命に努力いたしました。何度も足を運び達成したときには万歳を叫びました。

 

しかし、貴女の万博への情熱と61歳にして衰えを全く知らぬ行動力に比べると、私の大阪万博経験など、足元にも及

びません。貴女の行動力に深く脱帽いたします。

 

貴女は上海万博の施設めぐりの最後となった情報通信館で、「40年前の大阪万博で、巨大な携帯電話を両手で持って未

来の通信技術の発展にワクワクしたのを思い出した」と話されましたね。

 

それで思い出しました。大阪万博の時、電気通信館の建物を、目を輝かして見つめていた若い日本女性のいたことを……。

その人は一人で来ておられたと思います。鞄と水筒を十字にかけ、それを革のバンドで止め、ズボン姿でした。《憧れの万博

に来た。バビリオンを徹底的に観よう!》という気迫がその若い全身から溢れていたのが、私の印象に強く残っています。

 

私は今報道の写真を拝見し、その女性こそ若き日の万博おばちゃん貴女のお姿だったと信じています。そして色々なあの

時の万博風景が頭に浮かびあがってきたのです。

 

アメリカ館の月の石や、ソ連館の宇宙船や宇宙服などが大阪万博では人気を集めましたが、私の印象に残っているのは万博

を支える世界の女性たちでした。

 

116あったバビリオンには、それぞれ国家を代表する美しいホステス(あの時はそう呼んでいましたね)がいました。そ

れが私に全館回りを決意させた原動力だったかもしれません。スカンジナビヤ館の金髪で透き通るような白い肌の美人には圧

倒されました。ドイツ館の背筋をまっすぐに伸ばしたホステスは胸を張って堂々としていました。

 

日本人ホステスは各都道府県から選抜されて案内所や機構・企業館などで活動していましたが、他の国のホステスに負けず

生き生きしていて、外国人相手に流暢な英語で説明する姿には、まさに女性中心の時代が来たと私は思い、感心したものです。

 

後年、私の属するカルチャーセンターのエッセーで、大阪万博ホステスを体験された方がいて「黄金の日々」というエッセー

を発表されていました。その方の人生の中でも大阪万博の時過ごした日々は、なにものにも替えられない黄金の輝きを今でも放

ち続けている。と、書いておられました。

 

「人類の進歩と調和」のテーマのもとに、太陽の塔の先端の黄金の顔は輝かしい未来のシンボルでした。しかし、あの塔を作

った岡本太郎は裏面に黒い太陽の顔を描くことも忘れませんでした。この意味は色々な解釈があるようですが、太陽の顔はい

つまでも、又いつでも黄金であるとは限らないのは事実です。

 

愛知万博では、「自然の叡智」をテーマとして、環境に配慮がはらわれるようになりました。上海の万博の「より良い都市、

より良い生活」のテーマの実現には、自然と環境への対策が欠かせなくなっています。今、これが人類にとっても最も大切な

ことです。貴女が上海で確かめようと毎日をついやされた主な動機がそこにあった、とおっしゃっておられるのには、感服の

ほかありません。

 

そして、次の万博が2015年イタリアのミラノで開かれます。テーマは「地球を養う命のためのエネルギー」とあります。

いよいよ黒い太陽が少し顔を出して、地球上に限りある食料や人類のエネルギーを養う農業のあり方はどうするか、などをテー

マにしなくてはならなくなったのではないかと私は思っています。

 

私はこのテーマならば、人類の未来を見届けるために、その時まで命があり、気力があればぜひ行ってみたいと思っています。

 

貴女はどうされますか? 貴女はお若いし、覇気がみなぎっている。貴女がミラノ万博に対して今後どうなさるのかを大いに

見守りたいと思います。

 

私はその時は満83歳になっています。もしミラノ万博で、貴女に偶然お会いすることが出来たなら、それこそ『ミラノの奇蹟』

だと今からワクワクしています。                                         敬具

 

(2010年11月29日)

 

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:★:cosmic harmony

'' 宙 平