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Chuhei
写真は償還されることのなかった、日本の戦時国債です。シルバー人材センター西宮の大塩さんが
持っておられたのを、今回そのコピーをご提供頂きました。
また、弾丸切手というのも、郵便局で売られていましたが、これは切手ではなく
国債でした。これも償還されることはなく。紙くずとなりました。
これは、大蔵大臣発行の当時としては大変な財産額となる国債でした。
非常に貴重な国債です。償還されなかったのは残念です。
アベノミクス麻生味
安倍首相がデフレから脱けだすためと称して「アベノミクス」政策を唱えると、円の為替価格
が円安の方向に動き出した。そして株も上がりだした。知り合いの証券会社の営業マンが久しぶ
りに私のところに電話をかけてきて、「市場の空気が変わりましたよ。大変革です。円安傾向は
続くのではないですか? 投資信託も外国債券も期待が持てますよ!」とはしゃいでいる。
《大丈夫かいな? 安倍さんは財政政策・金融緩和・成長戦略の3本の矢で景気回復をすると言
っている。予算に公共事業などを手厚く盛り込み、日本銀行に札をバンバン発行させようとして
いる。そうすれば、一時的には円安になり株は上がるが後が続かないぞ! その上、国債をさら
に発行することになり、国の借金だけがますます増えるぞ!》
本当に景気を回復させようとするのなら、成長戦略に本腰を入れて取り組み、その成長を見守り、
じっくりとその成果を待つことが必要である。例えば先端医療機器産業、医療・介護技術、環境
産業、新エネルギー産業、新農業生産技術、など成長分野を拡大させて、日本経済を支えねばな
らない。しかし、この分野では、財政・金融のように目立つ動きがまだ見えて来ない。
日本の借金総額は今や九百三十兆八千六百億、地方自冶体の借金三百兆を加えて、千二百三十
兆八千六百億、といわれ、先進国では類を見ない異常な借金額である。しかし日本の国内の個人
金融資産高(ほとんど貯蓄)が、千五百兆円あるといわれ、それが日本の借金の安定性の裏付け
となっている。
我々国民の貯蓄が国の借金の裏付けになっているとは、なんとも気味の悪い話で、何かの原因
で、国の経済が行き詰ったとき、我々の貯蓄が最終的に国に収奪される可能性もあることを忘れ
てはならない。
先の大戦中、日本政府は膨大な軍事費用を賄うため、戦時国債を発行した。私も国民学校の生
徒ながら、当時郵便局から売り出された「弾丸切手」という名の当時額面2円の国債を買った。
国のためを思い小遣いを懸命に貯めたお金だった。だがこれは償還されることは無かった。
私と同年配の大塩さんは、今では、紙くずとなった戦時国債をもっておられる。大塩さんは西
宮市シルバー人材センターの仲間で、インターネット同好会の世話役を勤めておられる方である。
その国債の額面は15円と10円、当時としてこれは、大変な財産であったろう。
収奪されたのは戦時国債だけではなかった。昭和21年2月17日、突然、政府はすべての預
金を完全に封鎖したことを告げた。その日から預金は自由に出せなくなった。やがて世帯主が月
額300円、世帯員一人100円を限度として、払い出されることとなった。払い出された金は
新円として、証紙を張って使用した。別にタンス預金をしていた人々もダメだった。一定の条件
で新円と交換しなければ使えなかった。最終的には封鎖された預金から財産税として一定額以上
の預金が徴収されるまで続いたのであった。
大塩さんは神戸で爆撃により、お母さんと弟を亡くし、ご自分も怪我をし、そして、お父さん
を亡くされたのはこの預金封鎖の日から間もなくの事だった。当時は中学3年生で世帯主として
封鎖預金に関わる手続きと、生活維持に対応しなければならず、大変だったと語っておられる。
この時多くの日本人は貧困のどん底にあえいでいた。
《円安になっているなら、自動車・電器・産業機械などの輸出産業が息を吹き返し、その間に成
長分野が伸びて実際の需要につながり収入が増え、消費が伸びて行かないと、アベノミクスは成
功したとは言えないぞ!》
かつて、国債が紙くずになり、預金が封鎖されたことを知っている私としては、日本国が、膨
満財政で借金に押しつぶされる前に、なんとか景気が回復し、企業からの税収が増え、貿易の収
支や、所得の収支もよくなり、景気が早く回復するのを祈るばかりである。
《不安はまだあるぞ! 首都直下型、南海東南海地震、富士山噴火、などの大災害。また今の政
策の流れから戦争に巻き込まれ、膨大な支出を余儀なくされ財政が行き詰まることである》
こんな将来の不安に対して、一般の庶民は、インフレや封鎖の恐れがあっても、貯蓄をして将
来の備えをするしかないのである。
しかし、その貯蓄が固定化してしまうと、消費は伸びない。アベノミクスではここを税制改正
に盛り込み味付けをした。「祖父母が資産を教育資金として孫に渡せば贈与税を非課税とする」
これは高齢者の固定化している貯蓄を吐き出させる一つの方法として考えられている。また会社
が内部に溜め込んだ金をなんとか使わせようと、交際費の非課税枠を広げようとしている。そし
て給料を上げればその企業の法人税を減免することなども考えられている。
そして、このような細かい味付けをしたのは、どうやら麻生副総理らしいということが分かっ
ている。と、いうのは以前の麻生首相時代に直接検討されていた政策だからだ。庶民の貯め込ん
だ貯蓄や、企業の内部留保金を引っ張り出してなんとか使わそうとするのが麻生流の経済対策だ。
自民党の中にはアソウミクスと呼ぶ人もいるらしい。
アベノミクスの麻生味は、可愛いい孫の進学には進んでお金を出したい、爺さん婆さんにとっ
ては甘い味だ。だが、相続税が増え、後期高齢者の保険料が次第に上がって行かざるを得ない苦
い味もそのうちじわじわと感じるようになる。
私はこれを聞いたとき麻生さんの「どうじゃ! 名案だろう」とほくそ笑むあの顔を思い浮か
べて苦笑した。
いずれにしろ、国民の個人金融資産千五百兆が、国にうまく利用されようとし、これからも狙
われ続けられているのは間違いないのである。
(平成25年1月31日)