有名人のe-Taxでの確定申告の場面です。
 
   
 
 ICカードリーダーライタでUSBに差し込み、個人認証をします。
 
e-Tax 
 
 
 今年の一月二十五日、税務署からe-mailが来た。【申告に関するお知らせ】とある。
いよいよ「e-Taxの季節」が到来したのである。

 

 私はこの季節を乗り越えないと、おだやかに春を迎えることが出来ないのだ。

 

 収入が年金だけの単純な確定申告をするのに、なぜ、そう大層に言うのか? それは、

5年前にe-Taxを始めようとして大変な苦労をしたからである。当時は今と違って、宣

伝している割に具体的な説明が不足していた。それに、私の理解も充分でなかったのだ

ろう。

 

 最初はインターネットで確定申告表をダウンロードして、申告を作成して、添付して

税務署に送れば良い、と、単純に考えていた。

 

 ところが、そうはいかない。まず自分の持つパソコンが税務署の利用環境に合ってい

るかどうか確認しなければならない。その上で電子証明の取得となる。これは市役所で

住民基本台帳カードを作ってもらい、それに電子証明書の発行を受けねばならない。こ

れには500円の手数料がかかり、別に暗証番号を登録しなければならない。このカー

ドには暗証番号が2種類付くことになる。その電子証明の期限は3年しかない。

 

 そして次にICカードリーダーライタを購入しなければならない。この器械は家電量

販店で購入できると説明書には書いてあるが、私は当時数軒の量販店を回って、見本を

示して、探してもらったがどこの店でも売ってなかった。最後に西宮税務署の前にある

納税協会でNTTコミニケーションズのものを買った。2500円位したのではないか

と思う。これは、使用する前にドライバーをインストロールしておく必要がある。

 

 ここまで揃うと、e-Tax確定申告の作成コーナーから「事前準備セットアップ」をイ

ンストロールし設定する必要がある。これで、「信頼済みサイトの登録」「ルート証明

書」「公的個人認証サービス利用者名」「署名送信モジュール」などがインストロール

されて、事前準備が完了する。

 

 そしてさらに作成コーナーから、初めての場合は利用者識別番号(16桁)と暗証番

号の取得申請をして、その告知が来るのを待ってはじめて作成開始となる。

 

 実は5年前、リーダーライタを買って、電子証明の取得はしたものの、同じ作成コー

ナーから書面での作成を選んで、従来通り判を押して提出したほうが、よほど簡単なの

で、e-Taxにせずに書面で提出していた。

 

 その翌年は、資料をもって税務署に行き税務署のパソコンを使って、提出しようとし

たが、e-TaxのPRに出てくる有名人のように横に係員が付いていて手伝ってくれるわ

けではないので、行き詰まると誰かに聞こうとするが、係りの人はみんな忙しく働いて

いて、聞くことができない。結局この時も作成コーナーからの書面で提出してしまった。

 

 平成22年度になって、電子証明を取り直し、パソコンもウィンドウ7になったのを

きっかけに、初めてe-Taxの送信による確定申告提出に成功した。しかし、すんなりと

行った訳ではない。行き詰まると何遍もヘルプデスクに電話をかけて進めた。例えば検

索にGoogleを使って作成コーナーを呼び出して進めた場合、画面が出なくなったりす

る。こんな場合は、ツールバーのポップアップブロッカーを解除しないと進められない

こんなことは電話で聞かないと分からなかった。

 

 平成23年度も、同じようにして、e-Taxに成功した。そして今年、平成24年度分の

e-Tax作成に取りかかった。e-mailの【申告に関するお知らせ】を開いて、識別番号と暗

証番号を打ち込むと、今年の暗証番号への変更というのがあったので、変更の手続きをし

た。そして「事前準備セットアップ」をインストロールし直すといよいよ作成開始である。 

 

 その前に、24年度の医療費を病院、医院別・薬局別にまとめて整理した。年齢ととも

に、年々医療費が増えてきている。確定申告の医療費控除は年間10万円を超える額に対

して適用される。若い時は年間10万円を超えることなど考えられなかったが、81歳と

もなると、同じ後期高齢者の妻の分を含めてはるかに超えた数字になっていて、改めて驚

く。私の場合は、県立病院東洋医学科の漢方薬、鍼灸治療費・眼科医院・歯科医院・脳検

査など、妻の場合は腰痛で去年から医院に通い出した費用などが増えていた

 

 作成開始となって、告知のあった利用者識別番号と暗証番号を打つと、住所氏名などを

確認する画面が出る。次へ進むと確定申告書第一表が出て、その項目を押せば数字を打ち

込む画面で、自然と計算してくれる。私の場合では、公的年金等、医療費控除、社会保険

控除、生命保険控除、地震保険控除、配偶者控除などである。

 

 ここまで進むと自動的に申告納税額を計算して、納める税金、または還付される税金額

が表示されている。この他、銀行や証券会社から「特定口座の株式等に係わる譲渡所得等

の金額の合計」が送られてきている場合は、損益明細者を打ち込んで、譲渡損失があれば

損益通算及び繰越控除の付表を付ける。私の場合もいくらかの繰越損失を引きずっている。

 

 打ち込みが終わると、申告書等送信票の画面が出て、いよいよ送信である。ここで初め

て購入したICカードリーダーライタが活躍する。基本台帳カード(電子証明の入ったも

の)を差し込み、パソコンのUSBにつないで、送信画面から、電子証明のパスワードを

押すと公的個人認証が完了し送信終了となる。

 

 こう書くと簡単なようだが、今年も途中で行き詰まり、ヘルプデスクに電話することが

あった。例えば医療費の明細書を別表につけて送る場合、領収書の日付の年月日を打たね

ばならない。領収書だけで193枚ある。

 

 1枚ごとに打ちこむのは大変だ。そこで病院・薬局ごとにまとめて打つと、いつの日付

を打つかということになる。手書きだと「何日〜何日」と書いても良いが、これをすると、

e-Taxの付表は「打ち方が間違っています」と出て、次へ進めない。こんな時電話で聞くと、

「最終日の領収書の日付を入れてください」となる。

 

 またその打ち込んだ医療費付表を「本表に組み入れます」というボタンがあって、それ

を押すと「拡張子が違っています」という表示が出て、進めなくなった。電話で聞くと

「付表を保存した画面から、ファイルの種類をクリックして選んで下さい」となって、言

われたファイルの種類を選ぶと、医療費の数字が本表に組み入れられた。もっとも医療費

の場合は付表をつけずに数字だけ送れば簡単だが、この場合は、領収書の提出が省略でき

ないので、あとで領収書を税務署に送らなければならない。そして、電話も実際には、こ

の時期は混み合っていて、すぐには通じない場合が多い。じっと我慢して待つより仕方が

ない。

 

 このように、私にとってはe-Taxで確定申告するのは、大変緊張をする冬の一大行事な

のである。

 

 2月20日、e-Taxで申告を送信したあと、私は昨年の24年度全体を精算し終わった

ようなすっきりした気持ちになり、家の近くをジョキングした。夙川下流の右岸、酒蔵通

り南のみどり橋付近に、白と赤の花を付ける数本の梅の木がある。

 

《あっ、白い梅が開いている! 赤い梅の蕾みも大きく膨らんでいる。ここには早くも春

の香りが漂ってきているぞ! これで春が迎えられる。3週間後に申告した還付金が戻る

頃は暖かくなり、堤の桜も蕾をつけはじめるだろう》

 

私はゆっくり、梅の香を吸い込んで深呼吸をした。

        

                             (平成25年2月24日)

 

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