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Chuhei
関西アーバン銀行の芦屋支店は開店して1周年を記念して、定期預金金利を
2ヶ月間だけ少し上げました。私は妻の預け替えの「護衛」をしました。
預け替え
銀行の預け替えが流行っている。銀行によっては新しく預け入れる定期預金の金利を高くす るところがあるからである。ところが前から預けている定期預金は低金利のままである。そし て新しく預けて少し高くなった金利もやがて満期がきて継続すれば低金利に戻る。
今年の3月の末、妻が銀行を回り現金を出して預け替えをすることになり、私に「護衛」を 頼んできた。大金という程でもないので大層なことであるが、70歳を越した妻が現金を持って あちこち歩くのは心配だから私も一緒に行くことにした。出金するのは、西宮の香櫨園のゆう ちょ銀行と信用金庫で、定期預金をするのは芦屋の関西アーバン銀行である。
この銀行は1年前に新しく芦屋の宮川けやき通り沿いに支店を出した。開店1周年を記念して、 1年定期新規の金利0.8%を打ち出した。1千万以上だと0.9%、それに年金受取・配当金受取・ 公共料金自動支払などいずれかの条件を満たせば、1.0%だという。その扱いをする最終日が、 この日なのである。
さて、ゆうちょ銀行の妻の普通貯金を出したあとは尼崎信用金庫の金利0.14%の1年定期の解 約であった。
日本は実に14年もの間極端な低金利が続いている。それより以前には定期預金の金利8%の時 があったのだ。100万円の預金で利息が年8万円もあれば、税金は別にしても多少の預け甲斐も あるが、今は夢の話となった。
それなら、株、外国債権、外貨預金がよいのか? いやそれらは一層悪い! デフレ不況や円 高でここ数年に及んで、その価値を大きく低下させている。妻は純粋の銀行預金主義で、私が僅 かながら株や外貨に手を出すとき強く反対した。今までの実績上は妻の勝ちであるから、私は何 も言えない。
さて、車を持たない私たちは信用金庫から歩いて近くのJRの駅へ行き、芦屋駅まで乗り、そこ から600メートルを歩かねばならない。妻が先に歩き、私が少し遅れて「護衛」の役を果たした。
関西アーバン銀行芦屋支店には、次々と定期預金の待ち番号札を引く人が、訪れていた。年配 の女性が多かった。後ろの席から声が聞こえてきた。「投資信託を勧められて、やっているけど 元を割り込んでいるわ、あんなのはダメね、国債はどうかしら」客の女性が、銀行の担当者に話 している。私は一人でつぶやいた。「国債だって100%大丈夫とは言えませんよ。敗戦により、 戦時国債は戻ってこなかったのですから……」そういえば、戦後に銀行預金も預金封鎖をして新 円に切替られた上、財産税として取り上げられたことがある。絶対安全とは言えない。さらに、 通貨の大量発行により、デフレがインフレに変われば、預金も国債も価値は大きく低下する。
妻は0.8%の定期預金を終えて、さらに満足顔でいった。「近くに三菱UFJ銀行があったね。 今からあそこの0.06%の定期預金の解約頼んでみるわ、支店が違うけど」やれやれ、まだ私の 「護衛」が続くのか。三菱UFJ銀行では「なにかにお使いになるのですか?」と聞いてきた。妻 は「金利の良いところへ乗り換えます」といった。暗証番号と身分証明であっさりお金が出た。
再び関西アーバン銀行芦屋支店に行って0.8%に変えた。その時、赤いドレスを来た女性の運転 する赤の高級そうなオープンカーが、銀行の駐車場に入ってきた。《あぁ! あんな芦屋夫人も 細かい金利を追っかけるのか?》と、その時思った。
お金は使わないと、国の経済は停滞する。しかし、先行きに不安感があると人々は守りに入り、 預金にたより、保全と金利に敏感になる。
今や、物を買いまくるのは、経済成長で豊かになりつつある中国の人達である。日本にもツアー を組んでやってきて、温泉に入りマグロのとろを食べ、銀座の高級店を回る。それ程遠くない昔、 多くの日本人も外国で高級ブランド品などを買い漁った。これはもうすでに過去の話となったのか?
この0.8%の金利も1年後には低い金利に戻る。その時はどこの銀行に持っていくのだろうか? また私は「護衛」をしなければならないのだろうか?
「どこかおかしい? なにかおかしい?」 通帳や印鑑や身分証明の入ったカバンを大事そうに抱えて帰る妻と並んで、私はつぶやいていた。
(22年4月11日)
■■◆ 宙 平 |