手近に星空が…… |
From Chuhei | 左の写真は中之島四丁目の大阪市立科学館です。 この中に平成16年にリニューアルした最新鋭のプラネタリウムがあります。学芸員が星空を投影しながら、解説を行っています。
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左の写真はアジアで最初といわれたカールツアイスU型のプラネタリウムです。昭和12年から平成元年まで、四ツ橋の電気科学館にありました。
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パソコンのプリンターのインクを新しく取り替えて見ると、
なんと全然印刷が出来ない。何度試みても、用紙が白紙のま
ま出てくるのである。《インクが乾燥して出ないのか?》
私のプリンターは、キャノンBJC‐四六五J。早速キャ
ノンの相談センターに電話した。そうすると、大阪の中之島
に修理センターがあるので、そこへ持って行ってくれという
ことである。場所をパソコンで確かめると中之島でも六丁目。
ロイヤルホテルよりまだ西へ一筋越えた所である。早速梅田
から歩いて行った。私はインクだけ持って行ったのだが、イ
ンクが悪いのでなく、器械が悪いかもしれないので、機械を
持ってきてほしいという事である。
再びその翌日十一月二日(水)、大きな袋に入れた重いプ
リンターを担いで、今度は阪神福島駅から歩いて行った。
「バージユニット(インクを吸い出す部位)を取替えます。 九、四五〇円です。よろしいか?」修理センターの人が言っ
た。《高い? しかし、良いも悪いも仕方ないではないか》
「午後一時過ぎには出来ています。その時間に来て下さい」
と、いわれたその時は、午前十時半だった。《こんな所で二
時間半も時間をついやさねばならない。さてどうするか?》
土佐堀川にそって東に歩いていると、左側に大きなドーム
状の建物が見えた。《あれは多分、大阪市立科学館だ。よし
あれに決めた》
科学館の前には、小学生の団体が群れていた。私は一階の
広間から地階の受付まで下り、切符を買ってプラネタリウム
ホールの柔らかい座席に坐った。そして丁度十一時に、プラ
ネタリウムが開演したのであった。
西の空にゆっくり太陽が落ちて行くと、次第に星のまたた
きが増えて行く、金星の光が増し、そして天の川をはさんで、
織姫星(ベガ)や彦星(アルタイル)などが見えはじめる。
東の空には赤い、今接近中の火星が輝いている《思い出した
ぞ! 六〇年以上も前、四ツ橋の電気科学館で、胸おどらせ
て観たことを……夕景から始まる演出も同じだった》
昔、小学校の同級生の三人で、プラネタリウムが見たくて、
西宮からやってきた。戦争中で日本が占領していた南の国の
星座というのがあった。その時見た南十字星が印象に残って
いる。しかし、音楽とともに太陽が沈み、星の世界となり、
日の出を迎えて終りとなるパターンは、昔と変わリなかった。
当時は昭和十二年に、アジアで最初に設置にされたカール
ツアイスU型という、ドイツ製の器械だった。今はコニカミ
ノルタ製「インフイニウムOSAKA」という最新鋭のプラ
ネタリウムである。昔の器械は九〇〇〇個の星を映し出した。
今の器械は考えられる限りの星を無限に近く映す。例えば天
の川は三五〇萬個の星として表現する。
「町の灯かりのすべてを消して見ましょう」というアナウン
スがあった。同時に周りの薄明かりが消えて、満天の星がく
っきりと映し出された。うわぁー! と声があがった。団体
の小学生達も、息をこらして真剣に見ていたのだ。「人間の
目に見える星の数は、約三〇〇〇個ですが、実際の宇宙の星
の数はそんなものどころではありません」器械が急に無限に
近い星を映した、天井が一面真白になって全体がキラキラと
輝いた。
説明はその後この十月三十日、六九四二万`まで近づいた
火星の大写しに続き、東側の秋の四辺形、ペガサスとアンド
ロメダ、北のカシオペヤ、南のくじら座、そして英雄ペルセ
ウスなどの星座とその物語に入っていった。
私は椅子を倒したまま、仰向きの姿勢で星空と対面してい
ると、身体ごと星空に溶け込んで行くように感じた。確かト
ーマスマンだったかが「夜空を眺めることは、地上から、ま
た人生から眼をそらす最上の方法だ」といっていたが、私の
心も星たちの世界にあった。こんな手近に、心をみたす星空
があったのだ。
約四五分でショウは終った。展示場を回り一階の店で、カ
レーとコーヒーの昼食をとると、丁度良い時間となった。
すっかり、リラックスした私は、キャノンの修理センター
で、九、四五〇円を高いと思わなく支払い、修理済みの大き
なプリンターも、重いと思わず肩に担いで、歩き始めた。
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宙 平 cosmicθharmony ☆★☆★☆★☆★ |