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世界の人口爆発は続いている
1995年2月の阪神淡路大震災の後、私の住む西宮市の人口が急に減少したことがあった。
その頃私はパソコンを使い始めていて、西宮市の募集した西宮市政のパソコンモニターにも参
加していた。震災の翌年だったと思うが、モニター会議をするというので、市役所の会議室に
パソコンモニター達が集まった。20人ぐらいだったと思うが、その時のテーマは「進行する
人口減少に如何に対応すべきか」というものだった。
人口減少が進み、少子化となると高齢者の年金支払いなど社会保障負担を、少ない若年層で 支えねばならなくなる、また人口減少は国力を弱める、と当時既に言われていた。その時もそ の問題についての意見が出たが、参加者大半の意見は「人口減少だからといって、産めよ、殖 やせよ政策は取る必要はない。高齢化に対する少子化の問題は確かにあるが、年代別人口の差 が一巡すれば適正な差として安定するのではないか、人口が減少するのは、必ずしも悪いこと ではない」というもので、それが会議の結論になった。
私も人口減を心配して増やすことを優遇する対策より、その時の状況で住民の本当に望む施 策を考えるべきだ、という意見であったが「行政機関は、その管轄下の人口の減少に大変な危 機感を感じているものだなぁ、税金が減収になるからだろう」とその時思った。
大震災の年、10月1日国勢調査時の西宮市の人口は、39万389人で前年より3万39 40人減っていた。しかし、5年後には以前を上回り、2015年には48万8147人と大 きく増加し続けている。
私はモニター会議を主催した当時の西宮市当局はここまで人口が増加するとは全く考えてい なかったのだろうな、と思って日本の人口と世界人口の動向を調べてみた。
日本の人口は2016年1月1日確定人口、1億2704万2千人で、1995年より14 7万2千人増加している、が、2008年の1億2808万4千人をピークとして以降減少を 続けている。
世界人口についてはネット上で時々刻々増加している数字を表示しているウエブページがあ る。それによると、2016年7月27日10時37分現在の人口は73億4165万433 人である。これは米国勢調査局と国連データーから推計した数字であるが、見ている間に増え ていく。1分間に137人、1日で20万人、1年で7千万人、が増え続けている。1年に6 千万人が亡くなり、1億3千万人が生まれて、今も急増中なのである。1995年は56億8 167万8196人だったから、この間の1年当たりの増加概数は7904万人となっている。
20万年の人類の歴史の中では、こんな人口爆発は今までなかった。西暦元年で3億人、そ してそこから、10億人になるのに1804年かかった。20億人が1927年、この辺から 急カーブで上昇、30億人が1959年、50億人が1987年、そして今、急速に73億人 を突破して増え続けている。
その中で、日本・ロシア・ドイツ、他ヨーロッパの諸国などで人口減少が始まった国があり、 全体の増加率はやや低下しはじめてはいるが、開発途上国の人口増は衰えていない。
国連の最新(2015年8月7日)の人口予測によると、2050年には、97億人に増え、 2100年には112億人が地上に生存することになるとされている。これは正に異常な世界 人口の爆発が続いていく状況ではないかと私は思う。そして、世界で人口増が最も大きくなる のがアフリカ、その次に続くのがアジアとなっている。
永い人類史上、今まで体験したことのないこのような世界人口爆発は、様々な問題を地球上 に引き起こしている。食糧・住宅・水・雇用に不足をもたらし、富の偏在から貧困層が増え問 題を深刻化している。限られた地球資源の下で、社会に格差、矛盾が生じ、争いの根本原因と なってきた。その格差、矛盾が国際化して、今まで大きな戦争を引き起こしてきた火種にもな っていると私は思っている。
このような世界人口増に対しては、今まで色々な動きがあった。私のよく覚えているのは、 アメリカ、マーガレット・サンガー夫人(1879〜1966)の「産児制限運動」である。 夫人はアメリカ産児制限連盟の創設者で、運動が広く行われるようになった功労者である。1 922年以降、6回にわたり日本にも訪れ産児制限運動を推進した。しかし、日本ではその後、 富国強兵のための「産めよ、増やせよ」の政策が終戦まで続いた。
中国の一人っ子政策は夫婦に子供は一人、を守らせる国策で、1979年以降2015年ま で続けられたが、高齢化が進み世代別人口のバランスがくずれ廃止となった。
「自然界の永久の調和として、人口5億人を維持しよう」というメッセージを第一条に掲げそ の文字を彫り込まれた人類への記念碑、ガイドストーンがアメリカジョージア州エルバート郡 の山頂に建てられたのは1980年4月であった。完成時には400人が集まり地元TVの放 送もあった。が、この記念碑を作ったのは「ロイヤルアメリカン」グループのRCクリスチャ ンと言われているだけで、グループも名前も、本名ではなかったようで、実際は誰がなんの目 的で作ったのかはわかっていない。ただこのグループは、莫大な富を握る秘密のグローバル・ エリート集団で最終ゴールは世界人口5億人へ向けての削減計画を実施しようとしているとさ れているが、真相は分からない。ただ、ネット上ではいろいろな推測が書かれている。
世界人口5億人だった1650年は日本では将軍家光の時代、中国では清国が建国、アメリ カはまだイギリスの植民地、フランスはルイ14世の治世である。ここを人口爆発の始まりと 考え、そこまで戻そうとするのか。
私は核戦争の末、人類が殆んど死滅し、オーストラリアのメルボルン周辺だけが生き残り、 そこに潜水艦がたどり着くという映画『渚にて』を思い出し、不気味な恐ろしさを感じた。今 の世界の情勢は、これを架空の話だからとは言っておれないと私は思う。
いま世界の各地で相次いで発生しているテロ事件も民族紛争、内戦、格差、貧困が原因とさ れるが、結局は世界の人口爆発がその背景にあると私は思っている。最近の殆どのテロは無差 別大量殺人を目指していて、テロリスト自身は初めから自爆が当たり前となっている。もし、 テロの組織が核爆弾技術を手にするか、または特定の保有国が核爆弾をテロ組織に売り、爆発 を指示して、世界の各地で核爆発テロを起こしたらと考えると、可能性のあることだけに、実 に恐ろしい。
イギリスが国民投票により、EU離脱を決めた大きな原因は、EUに入った難民のイギリス への移動を避けたい国民の気持ちが優ったからであり、アメリカのトランプ大統領候補がイス ラム教徒の入国を制限すると放言し、不法移民対策としてメキシコ国境に壁を作ることを、共 和党の綱領として認めさせたことが一定の支持を受けているのも、その背景には、やはり人口 爆発の事実があると思われる。
地球上に人類が溢れるように増えて、このように色々な問題を引き起こしつつある時、日本 では少子化担当特命大臣まで設けて、その対策に躍起になっている。このような状況の下では、 どうすべきなのだろうか。
今年の6月16日、メール仲間から、『世界で一番貧しい大統領』ホセ・ムヒカ ウルガイ 大統領の国連リオ会議での演説(2011年)の文が送られてきた。私は演説の最初の問いか けに、ひきつけられた。
「ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょ うか? 呼吸していくための十分な酸素が残るのでしょうか? 同じことを別の質問で言う ならば、西洋の富裕な社会がおこなっている傲慢な¥チ費を世界の70から80億人もの 人々がおこなうための資源は、この地球に存在するのでしょうか?」そして「これほどまで に残酷な競争によって成り立っている消費社会の中で『みんなで世界を良くしていこう』と いう共存共栄な考え方は出来るでしょうか?」
大統領は1935年生まれ、ウルガイの極左武装組織で活動し、数度の逮捕歴や13年もの 投獄歴もある。その後議員となり、2010年大統領となる。が、給料は8割を寄付して10 万円程度、必要最低限のものしか持たず、世界一清貧な生き方をしていることで有名な大統領 である。そして、演説は次のような言葉によって締めくくられていた。
「我々はスラップアンドビルドの使い捨て社会の悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか? 我々はこの問題を解決する正道に世界を導かなくてはなりません」 「発展は人類に幸福をもたらさなくてはなりません。私が目指す発展とは、愛情や人間関係、 子供を育てること、そして必要最低限のものをもつことなのです」
これは人類が、人口爆発時代をしのぐため、共存共栄で進む、唯一の正道を示しているもので はないか、と、私は演説に感動して強く思った。
限りある地球上の資源、これを人類同士で奪い合い、他を排除して滅亡させる、というのでは なく、人類はお互い「足るを知る」幸せを知り、「分かち合い」進む、という考え方に立たなけ ればならない。
1912年4月、タイタニック号の沈没事故。2293名の乗船人数に対し、救命ボートは 1178人分しかない。死者は1522人だった。危機に対応する人間の考え方で事態は大きく 左右される。その時のスミス船長の指示は「婦女子を優先して助けよ」。これを「婦女子のみ」 と解釈して男性をボートに乗せなかった避難誘導の航海士もいた。ただ一人の日本人細野正文さ んの手記では、死を覚悟して日本人の恥になるような行いはしないと心を決めた。乗客が落ち着 いていたことは感心すべきことだと思った。男子で乗ろうと焦るものも多勢いたが、船員は拳銃 を向けた。その時最後のボートから「もう2人」という声が聞こえ下りつつあったボートに思わ ず飛び込んで乗った、とある。船長、副船長、一等航海士、事務長、船医、機関士長及び部員、 最後まで演奏を続けたバンドメンバーなどはボートに乗ることなく亡くなっている。近年、近隣 国での、船長から先に逃げ出した海難事故などと比べると、助けられなかった命の数に残念な思 いが残るものの、乗組員、乗客の危機に対する考え方はかなり「分かち合い」精神レベルの高い ものであった、と私は思っている。
そしてさらに思う。宇宙を回りながら巡航している我々人類の「地球号」は、タイタニック号 と違って、まだ、沈没する恐れはないではないか。今までになく急激に増えた人間の数に圧し潰 されているわけでもない。地球人口が100億人を超えたとしても、賢明な人類は自爆テロ、大 量刺殺、大量射殺犯罪、戦争などの殺し合いによる削減を避け、必ず「分かち合い」共存共栄の 精神レベルをより高く持って進むことだろう。
私は人類の叡智を心から信じている。
(2016年7月27日)
******* 宙 平 ******* |
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