思い出話(タイガー計算機) |
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中村 清より
思い出話 「事務機器について (3)」
入社当時の会社で、課に1台しかなく、「終わったら次貸してよ。」と言いながら、取り合いで使っていた事務機器がありました。それは計算機でした。
今のような電卓ではなく、先日のメールでは多喜丈城さんも使っていたと言う手回し式のターガー計算機でした。
当時の計算の道具と言えば「算盤」が主体でした。算盤は室町時代末期の頃に中国より渡来し使用し始めたものといわれておりますが、算盤には四つ珠と五つ珠があり、我々が小学校で習ったのは四つ珠でした。小学校4年生の頃かと記憶しておりますが、親戚の家に、そこの息子を教えに算盤の先生が来ており、「あんたもよかったらおいで」と言われ、将来商売人になるなら算盤の一つも出来ねばと、毎週日曜日の午前中その家に稽古に通っておりました。1年少しで戦争が激しくなって来たので中止になりましたが、そこで身についたのは、足し算と引き算、掛け算は精々掛ける数が2桁か3桁程度でした。
入社した当時は、米ドルが¥360-の頃で、外貨額に36を掛けて0を1桁加えれば概算での円貨への計算は算盤で可能でした。所が成約報告書を作成するには、売上外貨総額にその日の為替レート、例えばUS$1=¥357.45を掛けて円貨総額を算出し、どれだけの利益が確保されたかを報告するものですが、これは5桁の掛け算となり、算盤ではちょっとと言う事でした。
米ドルの場合はまだよいのですが、問題はStg£(英国の通貨スターリングポンド)です。これは10進数ではなく、12d(12ペンス)がsh1(1シリング)、sh20(20シリング)が£1(1ポンド)と言ことで、これをその日のレートで円貨に換算するのは大変な事で、到底算盤では不可能でした。会社では1d〜11dまで早見表の様なものを作りこれを利用しておりました。
即ち1dは£で表すと1/240=0.0041、2dは2/240=0.0083、3dは3/240=0.0125・・・ この様な表を見ながら、Stg£2,521−12−3dをその日のレート、Stg£1=¥1,002.25で円価に換算するには2,521.6125X1,002.25、即ち8桁X6桁の計算になります。計算機が無ければどうにもならなかったものです。 その後10年位してからかと思いますが電子計算機が出現しました。1台が机1つに相当する様な大きさであったと記憶しております。1桁につき1〜9まで豆電球の様なものが点いたり消えたりして数字を表していたように思うのですが、この機械が使われていた頃、私は長期に海外駐在中でほとんどこれを使った経験が無く、詳しい事は覚えていません。
海外から帰任した頃に卓上電子計算機が出始めたかと思います。大手家電のシャープは比較的早くこれに着手し、いずれパソコンに結びつく、また入力した数字を表示する窓は小さいながら液晶、これが液晶テレビへと発展していった次第。しかし当時、電卓一台、(今ほど小型ではなく、少し大きいものでしたが)数万円したと記憶しております。今では百均ショップでも売っているのにね・・・
アフリカでも旧英領植民地との取引が多かったので、金額はStg£、常にタイガー計算機のお世話になっておりました。掛けられる数をセットし掛ける数の回数だけハンドルを回し、桁をずらし次の桁の回数だけジャリジャリとまわす、それを繰り返すと桁ごとに回した回数加算したものがが答えとなって現れる、掛算は足算を繰り返している構造になっていたと思います。
逆に割算は引算を繰り返すもので、割られる数字をセットし、ハンドルを掛算とは逆方向に回す、行き過ぎるとチンと音がするので1回戻して桁をずらす。割算はジャリ、ジャリ、チンの繰り返しであったと、懐かしく思い出す次第。
以上
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