|
|||
14日分の血糖値を連続して測定するリプレです。 | |||
リプレで測定した私の血糖値グラフです。
|
|||
週刊文春3月16日号の記事です。
|
|||
血糖値
2014年3月に心筋梗塞で入院して以来通っている西宮の渡辺血管センターで昨年、血液検査をしたところ、 食後2時間の血糖値が224まで上がった時があった。血糖値は普通、空腹時で70から109が、食事の2時 間後では140までが正常値とされている。担当医師は糖尿病になりかけの「境界型糖尿病」だとして、血糖を 下げる薬ジャヌビア50mgを私に処方した。
ところが、この薬を飲み始めてからしばらくして、頭がふらつくようになった。夜寝るときはそうでもないが、 起きるとおかしくなるのである。私はジャヌビアを飲むのを中止した上、担当医師に相談した。改めてCTスキ ャンで調べ、脳疾患の医師を紹介してもらいMRIの検査を受けた。が、頭がふらつく原因は分からなかった。
心筋梗塞の時以来、私は血液をさらさらにする薬バイアスピリン錠やブラビックス錠(クラビドグレル錠)を 飲み続けなければならなくなった。そのほか、血圧を下げる薬、コレストロール濃度を下げる薬など色々な薬を 飲み続けている。その上に血糖を下げるジャヌピアが加わったので、薬の副作用が重なって、頭のふらつきが起 こったのであろうと私は思っている。昔は血糖を下げる薬を飲むと下がりすぎて低血糖になったという話をよく 聞いたが、ジャヌピアは新しい薬で値段は高いが、その点は改良されているらしい。ジャヌピアだけのせいでは ないとも思う。
しかし、薬はどんな薬でも必ず副作用があるものである。また年齢とも関係があり、年をとり体が衰えると、 副作用は効能書きに書いてあるとおりに、てきめんに表れるものである。私は血糖値の対策として、食事の内容 に注意し、毎日運動をして下げる努力をすることを説明し、血糖値を下げる薬を処方することは止めてもらった。
その後、頭のふらつきはなくなったが、今年の2月になって、神戸三宮の掛かり付けの眼科医院、岡田先生に 私の眼の疲れと衰えを訴えたところ、また血糖値を測ることになった。眼の中の血管と血糖とはもちろん関係が あり、その値が高くなれば、眼にも悪い症状を引き起こす。
岡田先生が測定に使ったのは日本では昨年発売したばかりのリブレという新しい器械である。この器械は2週 間の血糖値の値を昼夜にわたり連続して調べることが出来る。私の左腕の上部に、直径3aの丸い器械が貼り付 けられた。これは直接血管とつながるものではない。皮膚の組織間液のブドウ糖濃度を1分間に1回の割合で測 定して、それを血糖値に換算して表示するものである。
今まで持続的に血糖値を測るには、古典的な1日に何回か指先から採血する方法か、また、皮下を調べるセン サーを利用するにしても、実際の採血した値と比べ補生しながら測定していた。しかし、新しいリブレは従来の 測定より正確と考えられ、補正を必要としないらしい。
腕に貼り付けられた丸い器械は防水がしてあって、そのまま風呂にはいっても、水を浴びても差し支えがない。 日常生活には気にならないし、夜寝るときもあまり意識することはない。1週間目に眼科医院に立ち寄って参考 までにリプレの値を測定してもらった。
携帯電話ぐらいの大きさのリーダーを岡田先生が腕の器械に近づけると、ピーと音がして、リーダーの画面に すぐに私の血糖値の1週間の日々のグラフが出た。いずれも食後に急激に上昇し正常値を超えているのが私の血 糖値の実態であった。
2週間後、リーダーに期間中の値を読み込んで、器械を外してもらった。今年の2月6日から2月19日まで の血糖値の毎日のグラフが出ていた。私のパターンは昼食後上がり始めて、少し下がるが、夕食後また上がり、 160から170となり、午後11時半ぐらいまで続いてから、下がるというものである。そして、私の一日の 60%から65%は、血糖値が正常値を超えている時間の中で生きていることが分かった。
岡田先生は私に血糖降下の薬を勧めた。しかし、私はほかにも薬を多く飲んでいるのでこれ以上、永く飲み続 けなければならない薬は飲みたくないと薬を断った。先生は「それでは食事の中で澱粉質は少なくして、食事の 順番としては必ず野菜から食べる事を守って下さい」といわれた。
私は、薬を飲むことを断ったことに、不安もあった。しかし飲まないと悪くなるのではないか、という不安以 上に、飲んだら副作用でふらふらするのではないかという恐れの方が強かった。
リブレの検査が終わって3日後の2月22日、NHKの『ガッテン』で最新報告「血糖値を下げるデルタパワ ーの謎」を見た。これは今まで『ためしてガッテン』として20年以上にわたり続いているNHKの人気番組で ある。そしてデルタパワーとは、人間の脳波にはベーター波(興奮)、アルファー波(落ち着き)、シイター波 (浅いまどろみ)、があり、深く睡眠をとったときに、デルタ波(熟睡)が出る、このデルタ波にこそ血糖値を 下げるパワーがある、というものであった。そして国立精神神経医療研究センターの実験として、平均睡眠時間 8時間半あればインスリンの分泌能力もアップし、より糖尿病になりにくい体になる可能性が高いとされている とあった。また、番組では糖尿病患者に睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬)を処方し、熟睡することによって血 糖値を30近く低下させるという実験結果を紹介。大阪市立大学医学部付属病院の稲葉雅章医師がこの睡眠薬は 「新しいので安全性が高い」そして糖尿病患者でも「わりと気軽に飲める」と語っていた。
私は安全性が高く、気楽に飲めるその睡眠薬で熟睡出来て、血糖値が下がるのなら、そんな良いことはない、 その薬を飲んでみたいと、大いに『ガッテン』して、番組でテレビに映されていた睡眠薬の名称をメモに書きと った。この薬こそ、岡田先生に処方を頼んでみよう、と思った。
ところがその後、月に1・2回通っている神戸元町の鍼灸院の、曽先生にその話をしたところ「私もいつも 『ガッテン』は興味深く見て、参考になるものは録画しているのですが、あの日のデルタパワーは今問題になっ て再放送を中止しているのですよ」と話された。
あの放送の後、ツイターには番組内容を問題視する声が殺到した。ある糖尿病専門医は「臨床の現場で問題に なっている」として、放送を見て睡眠薬を希望する患者が増えて、対応に追われる医療機関が出ていることも指 摘していたそうである。私は睡眠薬を気軽に飲めてそれで安全に血糖値を下げることが出来ると番組で明言して いるのが問題なのだと、すぐに思った。同時に『ガッテン』の放送パワーの影響の早さと大きさにも驚いた。
3月1日放送のNHK『ガッテン』では、冒頭に、いつも明るい小野文恵アナウンサーが、沈痛な表情で2月 22日放送の「デルタパワーの謎」に重大な問題があったと謝罪した。「説明が不十分だったり、行き過ぎた表 現があったりしたため、混乱を招いてしまいました」として、睡眠薬で糖尿病が治療できる、また糖尿病発症の 予防にもなる、と解説してしまったことを詫びて頭を合計5回も下げた。
またその後、週刊文春3月16日号では「NHK『ガッテン』を信じるな」という記事が出て、「睡眠薬の負 の面も伝えるべき」「出演医師の講座に薬品会社から200万円支払われている」「NHK管理職がボンクラで チェック不備」また、そのほか、今までの『ガッテン』にも効果に疑問のあるものがあった、などとも書かれて いた。記事によると医師により推奨されていた睡眠薬オレキシン受容体拮抗薬は、製薬メーカーMSDの商品名 ベルソムラである。
この薬の副作用をネットで調べてみると、重い副作用は少ないが、眠気、めまい、ふらつき、疲労感、頭痛、 そして悪夢、入眠時幻覚などが起こることがあるとあった。また、アメリカ食品医薬品局の発表として、多容量 を服用すると、自殺念慮が現れるというのもあった。
私は日頃からピンピン生きてコロリと死ぬ、ことを願っている。万が一、寝たきりになってしまい、ピンピン 生きられなくなったら、この薬を大量に飲めば、コロリと憧れの「眠りながらの自然死」が出来るのではないか、 とふと思った。『ガッテン』流に言えば「デルタパワーによる熟睡安楽死」である。
しかし、そこで私は踏みとどまって思いを変えた。『ガッテン』は医院や病院では聴けないユニークな知識を 知ることが出来る、私にとっては有難い番組だが、睡眠薬を飲むことに『ガッテン』したことは直ちに撤回、も う決して薬に関する話には絶対に『ガッテン』しないぞ、と決めた。
そして血糖値には、食事と運動で対応する。まず、食事は何が何でも野菜から食べることを徹底する。次いで 魚、肉、パンやご飯は最後に一切れ、または軽く一杯。
運動は雨が降ろうが、嵐になろうが、毎日3`以上は歩く。月に1・2回は山を歩く。
コーヒー・紅茶はノンシュガーで通し抜く。酒を飲む時は「糖分ゼロ」の種類を選ぶ。
いたって平凡な、今でもある程度はやっていることではあるが、大事なのは断固徹底すること。そして、継続 することなのだ。
私は改めて、自分で決めた自分の方針に自分で『ガッテン』した。
(平成29年3月28日)
****** 宙 平 ****** |