From Chuhei
 
 
 
上の図は、特許庁特許出願技術動向調査報告書概要 自動運転自動車より
 
3回目の認知機能検査
 
 
 
 75歳以上の高齢者の自動車運転免許の更新には、高齢者講習に加え講習予備検査が必要である。
これは認知機能検査とも呼ばれ、認知症であるかどうかを調べるものである。
 
 私はいつも《こんな子供だましみたいな検査で、運転に支障のある認知症がわかるのだろうか?》
と心の中で反発しながら、今年も10月1日に3回目となるこの検査を受けた。
 
 私が自動車運転免許証を取得したのは昭和38年8月13日である。最初のうちは勤務会社の営業
用車を運転したこともあったが、その内運転する必要もなくなり、長いあいだにわたり、ペーパードライバーを続け
ている。免許期限の更新手続きは、簡単な眼の検査があるだけだったので、通知の都度、更新を繰り返してきた。
 
 ところが、9年前の平成18年の更新時から高齢者は、運転実習を指定された教習所で受けねばならな
いことになった。この時、日頃全く運転していない私は、どうしたものかと慌てて思案した。結局、にわか勉強で教
習所へ練習に行ったり教習本を読んだりして、やっと運転をこなしたものだった。
 
 そして運転免許は3年ごとの更新となり、6年前の平成21年からは、運転実習に加え認知機能検査を受
けることが義務付けられた。その時は、甲子園自動車教習所で@時間の見当識(今日は何年何月何日か、
何曜日か、今は何時か、などを答える)A手がかり再生(16の絵を4つずつ見せて、一定時間後どれだけ
覚えているか、そして、ヒントを与えて思い出す絵を答える)B時計描画の実施(時計の文字盤を書かせて試
験官の言った時刻に合わせて針を記入させる)を受けた。しかし、この時の私の関心は高齢者講習の運転実習
であった。びくびくしながら運転した。車庫入れなどは、ハンドル操作を検査官に手伝ってもらってやっと出来たという
始末であった。
 
 そして、3年前の平成24年には、本気で《お金を出して、あんな認知機能検査を受けてまでして、免許の更
新の必要はない。さっさと返上しよう》と思っていた。
 
 ところが、「更新手続きをしてください」という通知が来てみると、長年続いていた免許をここで返上するのが寂し
い気になってきた。そこで、甲子園自動車教習所に「運転実習はしたくないが、それでもかまわないか?」と電話した。
「来て相談してください」ということで行ったら、相談の雰囲気ではなくそのまま検査を受けるしかなかった。
 
 この時の認知機能検査は前回と同様であった。《こんな全く同じ検査を何回も繰り返していて意味があるのか?》
と又、疑問が湧いたが、認知症になれば、同じ検査を何回繰り返されても、出来ないものは出来ないのかもしれない。
運転実習は8人の受験者がいたなか、特別に頼んで、私一人だけは実際の車に乗らず、ドライビングシミュレーター
を使わせてもらって、一応の動作確認をなんとかこなした。アクセルを強く踏みつけ過ぎるなど全くの不安定な運転に
検査官も驚いていたが、これだと実際に暴走する危険がないので、私自身は気が楽だった。
 
 そして今年の平成27年、私は今度こそ《運転免許は返上しよう》と心に決めていた。ところが、更新のための検査
と講習の通知が来た時考えた。《いま運転する気は全くないが、報道されているように、もう5年待つと、自動的に運
転出来る車が出てくるかも知れない。スタートボタンを押すだけで、後はカーナビゲーションをチェックするだけでどこへで
も行ける車。全くの自動運転なら免許はいらない、という人もいるが、警察はどんなことになっても最大の権益「免許許
可権」を手放すことはないだろう。免許は持っていて、なんとか自動運転車に乗ってみたいものだ。とにかく今回は更新
出来たらしておこう。安倍首相が国際フォーラムで「2020年の東京には自動運転車がきっと走り回っている。ぜひ
見に来てほしい」と盛んにアピールしているあの車だ!》
 
 もう一つ考えたのは、マイナンバー制が実施されることである。今、最も有力な身分証明は運転免許証である。これを
返上すると運転経歴証明書の交付を申請して、本人確認書類として使うことが出来るとされている。しかし、住所など
の変更は任意となり、写真の期限もない。運転免許の無い場合の公的な身分証明はマイナンバーが入った個人番号
カードが中心となる。しかしながら、私は身分証明が必要な時、個人番号カードは使いたくない。このカードは税番号カ
ードともいわれ、最終的には一人一人の国民の全資産を一元的に把握して、所有資産から、税の徴収を行なう基礎
データーとするものである。銀行や証券会社など全金融機関がすべての顧客のマイナンバーの登録を完了した時、税務
者は番号で名寄せして個人の資産高を知ることが出来る。こんな番号カードは矢鱈に人に見せるものではない。やはり
身分証明用として運転免許証は必要なのである。いつか、個人番号が運転免許に書き込まれる日が来るまでは……。
 
 今年、認知機能検査と高齢者講習の知らせが来たのは、6月16日であった。受講する期間は12月24日まで
ある。7月末に甲子園自動車教習所に電話で申し込んだところ、なんと驚いたことに、もうすでに講習は満員で順番を
待っていると受講期間に間に合わないことがわかった。前の講習を受けた時から3年、その間に後期高齢者の受講者の
数が急激に増えていたのである。講習は一定の時間内に車を使って運転実習をしなければならないため、一回の人数は
6人〜8人が限度で、どこの教習所も追いつかない状況になっていたのだ。予備検査を含めての講習料金は5850円、
今すべての教習所は大いに潤っている。
 
 私は阪神電車の 車窓からいつも眺めている大物駅近くの、阪神ライディングスクールでやっと間に合う日の予約が取れ、
3回目の認知機能検査を受けることが出来たのである。
 
 この検査結果の判定には3段階あって、76点以上、記憶力・判断力、心配なし。49点以上76点未満、記憶
力・判断力、少し低い。49点未満、記憶力・判断力低いとなっている。49点未満であると、その最近の交通歴に「信
号無視、一時停止違反」があった場合は専門医の診察を受け、認知症と判断されれば免許は取り消される。私はなん
とか、76点以上に入ることができたが、加齢とともに示された絵を思い出すのやそれを書くのに時間がかかるようになってき
ているから、次回の検査では認知症と言われないよう気をつける必要がある。そして、運転実習では「私は運転しません」
といい通すことにした。この教習所はシミュレーターも無さそうだし、そんな私に対してどうするのか? と思っていたら、あっさりと
「同乗見学」で済ませてくれた。他の人の運転実習の車に乗り合わせて、教習所内のコースを回るだけであった。
 
 こうして、今年もとうとう高齢者講習終了証を手にして、10月30日、兵庫県警本部別館6階にある神戸優良・高齢
運転センターで自動的に写真を撮ってもらい、3年先までの運転免許を更新した。
 
 このセンターでは、私と同年齢かそれ以上の人で更新に来ている人も多かった。名前を呼ばれて、新しい運転免許証を受
け取るとき、本当に嬉しそうな顔をしていた腰の曲がった男のお年寄りの姿が印象に残った。
 
 私の新しい運転免許期限は平成30年12月23日、その時は87歳。先ずはそこまで寿命が延びた。と、いう気がし
た。しかしその時、認知症は大丈夫か? 「私は運転しません」と実習検査で突っ張り通せるのか? 私の挑戦は3年後にま
た始まる。
 
                                             (平成27年11月5日)
 
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宙 平
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