思い出話 「事務機器について(英文タイプライター)」 |
上の写真はインターネットから借用 |
昭和30年、私が学校を出て最初に就職したのは大阪船場にある小さな貿易商社でした。繊維業界が華やかなりし頃で、この会社は繊維製品の輸出を主体とするアフリカ貿易を専門とする会社でした。
戦前からアフリカ貿易を手がけており、ことアフリカに関しては二社五綿といえども一目をおくというものでした。
従って私も二十数年ここに在籍する間に、数度にわたり短期出張・長期駐在で延べ6年以上、西アフリカに出向かされておりました。(この会社は今も存続しており、毎年秋にOB会が開かれ、昨年も11月に出席し当時の仲間と旧交を温めてきました。)
入社して最初に与えられた仕事は営業部直輸課で、どんな仕事をすればよいのですかと聞くと、海外の取引先と直接文通して取引を行うという事で、一人一台ずつ英文タイプライターが与えられ、いわゆるEnglish correspondence で手紙を書いて Air−mail(航空便)で送り、急ぐものは Cable(電報)で取引先と連絡を取るというようなことでした。
英文タイプを打って手紙を書き、Price List(価格表)を作って商品見本と共に送り、成約が出来た時には Sales Confirmation(売約確認書)をタイプするという様な毎日でした。 英文タイプについては、高校1年の頃であったかと思いますが、家の近くにタイプの塾の様なものがあり、
何度か遊び方々習いに行って、ASDFGのキーをどの指で打つか、左右4本ずつの指でとのキーを打つのか、いわゆるブラインドタッチの練習などをした事があったので、入社していきなり英文タイプを打てといわれてもそれ程苦にはなりませんでした。
ブラインドタッチで思い出したのですが、同じ社内にいたある人は、左右2本の人差し指しか使わない、全てのキーをこの2本で打つ(雨だれ式とか言われていましたが)それでもものすごく速く、8本の指で打つよりも速いといわれておりました。 タイプなどは打った結果が間違いなく綺麗に打たれておればよいのであって、どうして打ったか、時間がかかったかどうかは、後には残らないものです。 ある時フランスに出張しパリから本社に電報を打つ必要が生じ、取引先の事務所で「タイプライターを使わせてもらえませんか」と頼み、「どうぞ」という事でその会社のタイプの前に座って、さあ電報の原稿(本社への電報ですからローマ字の日本語)を打とうとキーボードを見ると、文字の並び方が英文タイプと全然違う、英語ではTHとかERなどよく使われる文字が使いやすい所に配置されている。
Qなどはたまにしか使わないので左上の隅にあるがフランス語のタイプでは真ん中にあったと記憶しております。そういえばフランス語ではしばしばQの字が使われる(私はフランス語には弱いのですが、Qu est ce que など)からかなと思いながら、一生懸命文字のある場所を探しながら(と言っても同じアルファベットの26文字ですが)キーをたたいた事もあったなと思いました。 昭和60年と記憶しておりますが初めてパソコンを入手した時、キーボードを見て英文タイプと同じ配列、私は何の抵抗もなく取り組む事が出来ました。但し当時のパソコンは8ビットで使えるのはANK(アルファベット・数字・カナ)のみ漢字が使えるようになったのはそれから数年して16ビットのパソコンが出来てからでした。
次回は和文タイプライターについて語らせていただきます。
以上
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