リレー競技一般の部一斉スタート(6日目)
リレーのエリート女子クラスは中国金メタル・日本銀、中国女子恐るべし(6日目)
男子75歳以上クラスは、湖を回るコース、直線距離1・5キロ、コントロールは9、といっても道
を行くのではない、尾根を伝い沢を超え湿地をわたらねばならない。地図は5千分の1、32分41秒で
ゴール。楽しく走ったつもりだが、クラスの連中は流石にもっと早い、6人中の5位となってしまう。
今のところこれが精一杯の走りだから仕方がない。
3日目は中津川の西北にある椛(はな)の湖高原のミドルディスタンス競技、ホテルから指定バス
1時間30分で会場広場へ、さらにスタート地区まで2・3キロ、35分を歩く。途中湖を渡る風が心地よ
い、今日も晴れ。11時14分スタート。75歳以上クラスのコントロールは9、距離3キロ、地図1万分の1。
快適に尾根を進み@を取り、笹薮を進んでA続いてB、平らな丘を横切ってCと順調に進んでDの
岩崖を目指した。確かに岩崖はあった。しかしそこにあるコントロールの番号が違った。《しまった!》
こんな時落ちついて地図の岩崖マークのある場所をよく見て、現在地を確かめるべきだった。ところ
がこの近くにある筈と考えて、本当の場所と反対の方向に動いていた。そうするとまた別のコントロ
ールが見えて、そちらの方に引かれていった。もちろん番号が違う。元へ戻ろうと思った。ところが
全然違うところをさ迷っていた。この日の競技は1時間30分を過ぎると失格になる。時計は12時30分を
回った。
地図上の現在地を探っていると、同じクラスの金子さんに会う。私より1時間早くスタートしている
筈である。他にも2人組で番号を聞く女性。もう帰りたいという年配女性、立ち止まったままの若い中
国人男性、敗残兵ばかり? ここはさ迷いを誘う魔物の森である。ようやく、Dを金子さんと一緒に見
つけてEへ、その途中一人になったが時間切れ、私は帰りのバスの時間もあるので帰ることにした。コ
ンパスを見て南へまっすぐ進むと湖に出てそこからゴールへ。金子さんはそれから全部回ったそうであ
る。さすがベテランだ。帰りのバスの中で口惜しさと、森の怖さがこみ上げてきた。
4日目は指定バスで、愛知県新城市作手高原に移動する。豊川から北に連なる山の中である。鬼久保ふ
れあい広場の裏の山のトレーニング用コントロール11のうち7を回る。木漏れ日のなかの走り、最初の日
と較べると、もう初夏の風情、風が爽やかでうれしい。バスで宿舎のホテル・ルートイン豊川へ向かう。
5日目は作手高原の北、菅沼・守義地区でロングディスタンス競技、山の小学校の会場からスタートま
で2キロ35分。75歳以上のクラスのコントロールは10、距離3・6キロ、地図1万分の1。真夏のような暑
い日となった。私なりに山を駆け走りに走った。1時間16分28秒、11名中6位。この日は日本人の参加者
が急に増えた。全日本大会を兼ねているからであろう。
そして、参加者中の最高齢者表彰があった。男子は高崎オリエンテーリングクラブの金井一さん84歳、
女性は横浜の三好良子さん78歳。
歳を重ねるといつしか参加を止めてしまう人が多い中で、金井一さんは、日本中の大きな大会には必
ず出場し続けられている。軍人だった時代の話をお聞きしたことがあるが、日頃は寡黙な方である。
また三好良子さんの膝には3ヶ所も人工関節が入っていると、私にいっておられたが、この日は完走さ
れた。今後競技で全部回れない時でも、出来る限りコントロールを多く回る気持ちで参加を続けるそうだ。
6日目、リレー競技。私は所属する大阪オリエンテーリングクラブの大林さん、坂本(忠)さんと組んで、
MIXクラスに出場した。
このクラスは年齢・性別に関係なく3人でリレーをする。このクラスだけでも登録は23チームあった。
日本のチームのほかは、中国4チーム、香港3、台北1、韓国1、カザフスタン1、国際色は豊かだ。このクラ
スの中では私は最高齢者になる。中国などは中学生から大学生までが主だ。大阪オリエンテーリングクラブ
の3チームの出場者でも、私の年齢の2回りは若い。私は第3走者と決まった。場所は4日目にトレーニン
グをした鬼久保ふれあい広場だが、この日は運動場をスタートとゴールに使い、東南の山地一帯が主戦場で
ある。
9時40分、第1走者全員一斉スタート、そして大林さんは28分10秒で早くも帰ってきて第2走者坂本
(忠)さんに、タッチした。その時点でMIXクラス5位である。
走者は途中会場である運動場の南側を通るように、コースが作られていて、ここから普通なら約10分後に
運動場の北側からタッチゾーンに入ってくる。私は運動場の南側で第2走者の姿を待ったが、日差しがきつ
く暑いので、中国の人たちが入っている木陰に割り込んで走者を見続けた。約45分後坂本(忠)さんの姿が
見えた。「ファイト! 坂本さん!」私は、思わず声をかけた。その時、一緒にいた中国人がなにか私にい
った。「お前もファイトだよ」と声をかけたようだ。「謝謝!」私はすぐに水を飲んでタッチゾーンへ。
坂本さんは59分07秒で私にタッチした。このあとで、私がタイムオーバーをしたり、ミスをして失格に
なれば、クラブや1・2走者に対し、それこそ切腹ものである。
懸命に走って森に入ると、目の前に急な坂が立ちふさがった。それを登りきったところの岩崖の下が@
であった。そこからは沢・尾根と9個のコントロールを回って、やっとゴールした。私は年齢相応に1時間
11分53秒かかった。三人の合計は2時間39分10秒、MIXクラス16位だった。これで私の6日間の走りはつい
に終わった。
今回の大会を通じて、感じたのは中国女子勢の活躍である。女子エリートクラスのスプリント競技も、
ミドルディスタンス競技もロングディスタンス競技も全部1位から3位までは中国女子が独占した。リレー
でも女子のエリート1位は中国だった。それに16歳から18歳までのクラスは男女とも中国勢が上位を占めた。
スプリントやロングで優勝したLI・JIさんは31歳だが、シドニーオリンピック女子1万メートル7位入賞の
選手だそうである。今や、アジアに恐るべき女子パワー群が出現してきた。今後が見ものである。
私自身は6日間、爽やかなみどりの中を走り、怪我もなく無事帰ってこられてほっとしている。しかし今
後は森の魔物に迷わされて敗残兵にならぬように、般若心経を毎日唱えることにした。
(平成22年5月15日)
■■◆ 宙 平
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Cosmic Harmony
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