From Chuhei
 
日本の愛知・岐阜で、アジアオリエンテーリング選手権大会が開かれました。
下はその時の写真の一部です。すべてオリエンテーリング写真家、上林弘敏
さんの撮影されたものです。(検索サイト 上林のオリエンテーリング写真集)
 
スタート前緊張しているところです。(5日目ロングデスタンス競技)

コントロール(標識)を見つけるとEカードをはめます。通過証明と時間が記録さ
れます。(3日目ミドルデスィタンス競技)

リレー競技一般の部一斉スタート(6日目)

リレーのエリート女子クラスは中国金メタル・日本銀、中国女子恐るべし(6日目)

新緑の山走り6日間
 
 
 日本でアジアオリエンテーリング選手権大会が、430日から55日まで開かれることになった。
最近、私の足の筋肉は固くなってきていて、もう今は早く走れない。参加するかどうか迷ったが、
緑の芽吹く山を走る魅力を思うと、ひとりでに申込をしてしまっていた。
 
 1日目は岐阜県中津川の南東にある根の上高原に指定のバスで行った。湖畔の丘はつつじの花が
山を包んでいた。峠からは恵那山が青く大きく見えた。広場の受付でこの日のモデル・イベントの
地図を貰い、荷物を広場に置いて、13あるコントロール(標識)に向かった。笹が深く倒木が多い。
競技ではないので、ゆっくりとコントロールを確かめて回る。反対側から中国語を話しながら少年
のグループが走り過ぎていく。この日は日本人より外国人の参加者が多いようだ。6個を確認して広
場に帰る。約1時間のトレーニング。高原は少し寒かった。
 
 2日目は短距離のスプリント競技。ホテル・ルートイン中津川に指定バスが迎えに来る。宿泊の
香港チーム、中国チーム、韓国チーム、オーストラリア人、等とともに昨日の根の上高原に向かう。
快晴である。杉林の中に山桜が彩りを見せている。広場には北京・深セン・香港・台北・カザフス
タン・日本の各チームの旗がひらめき、外国語が飛び交っている。

 

 男子75歳以上クラスは、湖を回るコース、直線距離15キロ、コントロールは9、といっても道

を行くのではない、尾根を伝い沢を超え湿地をわたらねばならない。地図は5千分の13241秒で

ゴール。楽しく走ったつもりだが、クラスの連中は流石にもっと早い、6人中の5位となってしまう。

今のところこれが精一杯の走りだから仕方がない。

 

 3日目は中津川の西北にある椛(はな)の湖高原のミドルディスタンス競技、ホテルから指定バス

1時間30分で会場広場へ、さらにスタート地区まで23キロ、35分を歩く。途中湖を渡る風が心地よ

い、今日も晴れ。1114分スタート。75歳以上クラスのコントロールは9、距離3キロ、地図1万分の1

 

 快適に尾根を進み@を取り、笹薮を進んでA続いてB、平らな丘を横切ってCと順調に進んでDの

岩崖を目指した。確かに岩崖はあった。しかしそこにあるコントロールの番号が違った。《しまった!》

こんな時落ちついて地図の岩崖マークのある場所をよく見て、現在地を確かめるべきだった。ところ

がこの近くにある筈と考えて、本当の場所と反対の方向に動いていた。そうするとまた別のコントロ

ールが見えて、そちらの方に引かれていった。もちろん番号が違う。元へ戻ろうと思った。ところが

全然違うところをさ迷っていた。この日の競技は1時間30分を過ぎると失格になる。時計は1230分を

回った。

 

 地図上の現在地を探っていると、同じクラスの金子さんに会う。私より1時間早くスタートしている

筈である。他にも2人組で番号を聞く女性。もう帰りたいという年配女性、立ち止まったままの若い中

国人男性、敗残兵ばかり? ここはさ迷いを誘う魔物の森である。ようやく、Dを金子さんと一緒に見

つけてEへ、その途中一人になったが時間切れ、私は帰りのバスの時間もあるので帰ることにした。コ

ンパスを見て南へまっすぐ進むと湖に出てそこからゴールへ。金子さんはそれから全部回ったそうであ

る。さすがベテランだ。帰りのバスの中で口惜しさと、森の怖さがこみ上げてきた。

 

 4日目は指定バスで、愛知県新城市作手高原に移動する。豊川から北に連なる山の中である。鬼久保ふ

れあい広場の裏の山のトレーニング用コントロール11のうち7を回る。木漏れ日のなかの走り、最初の日

と較べると、もう初夏の風情、風が爽やかでうれしい。バスで宿舎のホテル・ルートイン豊川へ向かう。

 

 5日目は作手高原の北、菅沼・守義地区でロングディスタンス競技、山の小学校の会場からスタートま

2キロ35分。75歳以上のクラスのコントロールは10、距離36キロ、地図1万分の1。真夏のような暑

い日となった。私なりに山を駆け走りに走った。1時間1628秒、11名中6位。この日は日本人の参加者

が急に増えた。全日本大会を兼ねているからであろう。

 

 そして、参加者中の最高齢者表彰があった。男子は高崎オリエンテーリングクラブの金井一さん84歳、

女性は横浜の三好良子さん78歳。

 

 歳を重ねるといつしか参加を止めてしまう人が多い中で、金井一さんは、日本中の大きな大会には必

ず出場し続けられている。軍人だった時代の話をお聞きしたことがあるが、日頃は寡黙な方である。

 

 また三好良子さんの膝には3ヶ所も人工関節が入っていると、私にいっておられたが、この日は完走さ

れた。今後競技で全部回れない時でも、出来る限りコントロールを多く回る気持ちで参加を続けるそうだ。

 

 6日目、リレー競技。私は所属する大阪オリエンテーリングクラブの大林さん、坂本(忠)さんと組んで、

MIXクラスに出場した。

 

 このクラスは年齢・性別に関係なく3人でリレーをする。このクラスだけでも登録は23チームあった。

日本のチームのほかは、中国4チーム、香港3、台北1、韓国1、カザフスタン1、国際色は豊かだ。このクラ

スの中では私は最高齢者になる。中国などは中学生から大学生までが主だ。大阪オリエンテーリングクラブ

3チームの出場者でも、私の年齢の2回りは若い。私は第3走者と決まった。場所は4日目にトレーニン

グをした鬼久保ふれあい広場だが、この日は運動場をスタートとゴールに使い、東南の山地一帯が主戦場で

ある。

 

 940分、第1走者全員一斉スタート、そして大林さんは2810秒で早くも帰ってきて第2走者坂本

(忠)さんに、タッチした。その時点でMIXクラス5位である。

 

 走者は途中会場である運動場の南側を通るように、コースが作られていて、ここから普通なら約10分後に

運動場の北側からタッチゾーンに入ってくる。私は運動場の南側で第2走者の姿を待ったが、日差しがきつ

く暑いので、中国の人たちが入っている木陰に割り込んで走者を見続けた。約45分後坂本(忠)さんの姿が

見えた。「ファイト! 坂本さん!」私は、思わず声をかけた。その時、一緒にいた中国人がなにか私にい

った。「お前もファイトだよ」と声をかけたようだ。「謝謝!」私はすぐに水を飲んでタッチゾーンへ。

 

 坂本さんは5907秒で私にタッチした。このあとで、私がタイムオーバーをしたり、ミスをして失格に

なれば、クラブや1・2走者に対し、それこそ切腹ものである。

 

 懸命に走って森に入ると、目の前に急な坂が立ちふさがった。それを登りきったところの岩崖の下が@

であった。そこからは沢・尾根と9個のコントロールを回って、やっとゴールした。私は年齢相応に1時間

1153秒かかった。三人の合計は2時間3910秒、MIXクラス16位だった。これで私の6日間の走りはつい

に終わった。

 

 今回の大会を通じて、感じたのは中国女子勢の活躍である。女子エリートクラスのスプリント競技も、

ミドルディスタンス競技もロングディスタンス競技も全部1位から3位までは中国女子が独占した。リレー

でも女子のエリート1位は中国だった。それに16歳から18歳までのクラスは男女とも中国勢が上位を占めた。

スプリントやロングで優勝したLIJIさんは31歳だが、シドニーオリンピック女子1万メートル7位入賞の

選手だそうである。今や、アジアに恐るべき女子パワー群が出現してきた。今後が見ものである。

 

 私自身は6日間、爽やかなみどりの中を走り、怪我もなく無事帰ってこられてほっとしている。しかし今

後は森の魔物に迷わされて敗残兵にならぬように、般若心経を毎日唱えることにした。                

                                     

                                    (平成22年5月15日)

 

 

■■◆      宙 平
■■■     Cosmic Harmony
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