『不都合な真実』を考える   宙平氏  平成19年2月5日投稿



From Chuhei
 
映画『不都合な真実』を見て、私の思ったことや考えを
エッセーにまとめてみました。前の『甑岩は告ぐ』はご
神体の岩のお告げとして書いたものですが、今回はこの
映画を見ての私の思いでもあります。
 
 
 
 
 
     『不都合な真実』を考える
 
 
 
 映画『不都合な真実』が、今日本で封切られ上映されている。この映画は、元アメリカ副大統領アル・ゴアが地球と人類の環境危機を訴えて、スライド講演を世界中でひらいてきた姿を、そのままに映したドキュメンタリーである。私は梅田ナビオTOHOフレックスでこの映画を見た。
 
 映画は温暖化で高山から雪が消え、氷河の氷が解けている様子を映し出す。
これは山麓に住む多くの住民に水不足をもたらす。またやがて陸地は狭まり、世界の各地と共にニューヨークの一部も海に沈む様子が映される。そして異常気象は大型ハリケーンを頻発させ、SARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザなどの伝染病を蔓延させる恐れがある。
 
 アル・ゴアはクリントン大統領時代の副大統領であった。長年環境問題に取り組んできたが、特に八九年息子の交通事故をきっかけに、将来の息子達が生きる地球環境への危機感を一層強めたと言う。そして二〇〇〇年、ブッシュとの大統領選では一旦勝利を報道されながら、票の数え直しと言うまさかの事態に僅差で敗れた。
 
 そのブッシュ政権は、石油資本の支援を背景にしているためか、九七年の地球温暖化防止京都会議で採択された京都議定書を未だに批准していない。アメリカは世界一の二酸化炭素排出国だというのになんということか! このアル・ゴアの大統領選の敗北が地球温暖化防止の実行を大きく遅らせたとも言える。
 
 その後、アル・ゴアは敗北の痛手を乗り越え、世界の人々にこの温暖化問題を伝えるためにスライド講演を決意して、これまで一〇〇〇回以上の講演活動を地味に行ってきた。
 
 ゴアはこの活動のなかで、環境危機という真実に対して、「不都合な」と言う壁に何度もぶつかってきた。ゴアは言う。

 

「真実のなかには、耳の痛いものがあります。なぜならそれらに耳を傾け、真実だと認めれば、あなたは変化を起こさなければならないからです。そしてその変化が、人には非常に都合が悪い場合があります」

 

 私は不都合が生じるのは、人間の生活のすべてに石油依存が進みすぎている結果であると思う。今ガソリンの消費を止めようと言われても、石油製品を廃止しようと言われても、石油をこれ以上掘らないで……と言われても、石油を運び込むなと言われても困る、不都合だと考える人達は多い。しかし、増え続ける大気中の二酸化炭素の量は、すでに限界に近づいているのである。

 

 京都議定書の約束の排出量削減目標は九〇年比でEUが八%、日本が六%、ロシヤは〇%である。アメリカは七%であったが、離脱してしまった。排出量が急激に増え続ける中国は今やアメリカに次いで、世界で二番目の排出大国だが、途上国と言うことで、削減義務を持たない。中国全土でガソリンを使う自動車が日本並みに普及すれば、どうにもならない排出量となってしまう。

 

 日本は車や電化製品の省エネは進みつつあり、スーパーなどのレジ袋の廃止も実行されつつある。が、ヨーロッパのように税制などの総合的な政策を打ち出して対応していないので、今や削減どころか逆に排出量が増加している。議定書の議長国としてどうするのか?

 

 報道によると、安倍首相は、今年になって環境問題への取組み方針を「環境立国戦略」として本年度中にまとめるように、若林環境相に指示した。これは、首相の欧州訪問でブレア英首相やメルケル独首相ら環境問題に関心の高い首脳らに、アジヤサミットでも指導力を発揮するように要請されたことを踏まえている。環境省は戦略について「今後の国際交渉の進め方など、より高次で哲学的な内容になる見込み」としているが、私はこの日本の対応は、この環境危機に対して切迫感が無く観念的で生ぬるく思えて仕方が無い。

 

 日本は資源の無い国である。石油は遠い中東からその大半を輸入によりまかなっている。このまま、石油資源を世界中の国が使い続けると、限度のある石油資源の価格は高騰していくことは間違いない。そして加速度的に環境危機は進む、その上経済的に、一番打撃を受けるのは石油輸入に頼る日本なのである。環境危機の前に経済危機に陥ってしまう。

 

 今日本がやるべきことは、石油に頼らないクリーンエネルギーの利用政策を徹底することである。ソーラーパワー、風力・ハイブリットカー、燃料電池カー、などの徹底を計ることが日本の環境立国である。そしてこの技術・製品を世界に向けて広めるのである。それでこそ、京都議定書の議長国として世界に対しリーダーシップが取れるのである

 

 このことを日本の産業界が理解し、製品のすべてにおいてもクリーンエネルギー利用を徹底すれば、各企業も革新的に発展し、日本経済の将来は明るく開けていくのである。

 

 一月末の朝日新聞で、前の環境相の小池百合子首相補佐官が、「日本では再生可能エネルギー利用への努力が、環境先進国に比べていま一つだ。技術はあるが、普及が徹底していない。環境税に反対しているのは、この国や業界、自社に自信のない人たちだ。この国の強みがどこにあるのかを理解している人は有効性を理解している」と言っている。在任当時の環境省で環境税案の上程の反対を受け、撤回せざるを得なかった「ぼやき」とも受け取れるが、今はもうぼやいている場合ではないと私は思う。二酸化炭素の排出量の多い製品を作る企業から徴収した税は、そのままクリーンエネルギーへの転換の補助金として還元するものであることを積極的に説明すべきである。そして、日本の産業界の製品のクリーンエネルギー化を徹底することは、産業界にとって決してマイナスにならない。むしろこのエネルギー改革こそが、多くの日本企業の将来に向けて大きく発展する道であることを強く主張していかなければならない。

 

 私は映画『不都合な真実』のなかで、アル・ゴアが豊富なデーターに基づいて環境危機を説明した後「ファッシズムに勝利し、天然痘を撲滅し、米ソの核軍縮競争を止めさせた人類に、温暖化をやめられないはずはない」と語る言葉に、彼の信念の強さを感じた。

 

 


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