From Chuhei
 
 
心臓の血管、冠動脈には番号があります。私は12番に、カテーテルによる
風船膨らまし、ステント挿入の治療処置を受けました。
 
 
即入院の記
 
 
3月12日の午後、私は近くの夙川公園で軽くジョッキングをしている時に、
胸を圧しつけられるような痛みを感じた。

 

《前にも感じたことがある。こんなのはすぐに治るだろう》と、そのまま続け

ていたが、痛みは止まらない。家に帰って休むとようやく治まった。

 

翌日、念のためと思って西宮渡辺心臓・血管センター(病院)へ行った。血

液検査、心電図検査、レントゲン検査、の後、急に診察室に呼ばれ、手術着に

着替えさせられた。

 

「貴方の症状では、直ぐにカテーテル検査とその処置が必要です。そのため、

2週間程度の入院をしていただきます」

 

「えっ! 家に帰れないのですか?」

 

「直ぐに奥様に来てもらって下さい」

 

そして、検査処置の同意書に署名すると、あっという間に、腕に点滴を打た

れ、鼻には酸素の管を、尿道に管を通され、身動きが出来なくなったまま、処

置室に運ばれていった。

 

私は毎日、ジョッキングをして身体を鍛えているつもりだったので、心臓の

動脈が硬化して心筋梗塞を起こすことなど考えてもいなかった。それだけに

《これは何かの間違いではないのか?》とふと思った。しかし、その時すでに、

私の上腕の血管からカテーテル(細い針金の管)が挿入され、そこから造影剤が

注入され、私の心臓の血管の状況が動画として映し出されていた。

 

後の説明で知ったことだが、心臓の血管には右冠動脈と左冠動脈がある。そ

の動脈はそれぞれ枝分かれしていて、右は1番から4番まで世界共通の番号

が付けられている。左は5番から15番まで、枝分かれ動脈の番号がある。そ

のうち右の1番とか左の5番などは主幹部分でこれか閉塞すると突然死してし

まう。私流に言えば《憧れのコロリ死》になる可能性が高い。

 

私の病名は急性心筋梗塞で、左の12番に閉塞がみられたので、そこに、カ

テーテルの先端についている風船を膨らまして動脈を大きく開き、そしてステ

ントいう網状の金属の支持器具を入れて円滑な血流を確保して風船は抜き去る

という治療のための処置を受けた。

 

処置の時間は2時間余り、別に痛みはなく無事終了した。しかしそれからが

大変だった。治療処置の後に心臓に変わった動きがあったり、出血したりする

ことを医師は極端に警戒する。そのため集中治療室で翌日は丸一日寝たきり

になった。部屋にトイレがあるのだがそこにすら行けないのである。尿道は管

に繋がったままで、点滴や自動心電図も外すことも出来ず、じっとしていた。

 

色んなことが気になりだした。英会話クラブの外人講師の謝礼は私が持ったま

まだ。どうするか? 明日はオリエンテーリングの復習会へ行けないとの連絡

は? 歯医者や眼科の予約はどうするか? カルチャー教室の懇親会には出席

できないとの連絡はどうするか? 人材センターの公園パトロールの講師を頼

まれていたのをどうするか? そうだ。センターでは二十周年の式典で表彰を

受ける手筈になっていたが? 次の日曜日、愛知県のオリエンテーリング大会

には、車に乗せてもらう予定だったので連絡は?  集中治療室では携帯電話

を使うことができないので、結局はみんな妻に頼むよりほかに方法がなかった。

 

3日目にようやく尿道の繋ぎがはずれて、点滴を引いたまま、トイレに行け

るようになったが、その都度、ナースステーションに連絡しなければならなか

った。そしてようやくこの日50メートルを歩くリハビリが始まった。4日目

は100メートル歩くリハビリ、5日目は200メートル歩くリハビリ。集中

管理室を出て、一般病棟に移ったのは、6日目であった。そしてこの日から色

々な検査が始まった心臓のMRI検査。翌日はドブタミンエコー検査(強心薬

を投与して心拍数を増やし心筋の動きを見る検査)。次の日の夜は睡眠中の無

呼吸状況を調べる睡眠ポリグラフィー検査。そして心臓超音波検査。更に糖尿

病の検査。すべての検査が終わったのは、13日目であった。その間、リハビ

リ室で自転車を毎日30分漕いだ。14日目は外出の許可を取り、妻の甥が探

してくれた近くの散髪屋へ行き、15日目の朝に退院した。

 

入院した日は寒くて冷たい冬の雨の日だったが、退院の日はもうさくらが咲

き始めていた。しかしこれで終わったわけではない。退院から18日後の4月

14日には,2泊3日の入院で、今度は左動脈の6番・7番のカテーテル検査

と処置をすると言われている。今度は12番の時よりも簡単らしいが、なぜ簡

単なのか良く分からない。そして色々な検査の結果として、糖尿病と無呼吸睡

眠には気をつけなければならないことになっている。そして血液サラサラの薬

として、バイアスピリン錠とブラピックス錠はこれからも飲み続けねばならな

い。更にリハビリは、今後5ヶ月間、病院のリハビリ室に通って、心電図や血

圧計を付けて自転車を漕がねばならない。

 

 

私は今年、ブラジルのポルトアレグロで行われるWMOC(世界マスターズオ

リエンテーリング選手権)に選手登録をしている。11月1日から始まるのだが

、こんな状態では果たして行けるのか? いやそれどころか、国内のオリエン

テーリングの大会にも、果たしてこれから参加できるのか?

 

それはとにかくとしても、私は《ピンピン生きてコロリと死ぬ》ことを、モ

ットーとしている。しかしながら、今回のように、血管動脈を風船で膨らまし

たり、ステントを挿入したりして、果たしてコロリと死ねるのか心配になって

きた。

 

思い切って、ブラジルヘ出かけ、ロングコースで無理やり全力疾走をすれば、

コロリと死ねるかもしれないが、同行の人たちに、捜索や手続きで迷惑がかか

ることになるので、無理は出来ない。今、大いに迷っている。

 

                               (2014年3月29日)

 

 

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:★:cosmic harmony
      宙 平
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